所長のつぶや記

日頃親しくお付き合いさせて頂いている俳優の寺田農(みのり)さんに、当センターの健診を受けて頂きました。
生まれてこの方、68年間、医者にかかったことが全くなく、健診というものにも無関心、ふだんから、「ボクはそんなにしてまで長生きしたくないよ。好きなことやってあとはケセラセラよ」と、まぁ、作家・俳優さんにありがちな、いわば「無頼派」とでもいうのでしょうか。
それがご家庭でのひょんなお話の中から、「もう年なんだから健診くらい受けてみたら」という奥様、お嬢様からの強いご要望。何やらご本人としてもお二人のこの包囲網に抗しきれず、心ならずも不承不承の受診に至った次第のようでありました。
お酒はお飲みになる時はかなり行けるものの、ふだんはほどほどで、ご自宅での晩酌は無し。食事に関しても、こういう業界の方々って夜遅く、時間が不規則でかなり栄養バランスも良くないのではと思っておりましたが、お話伺うに、朝はふつうに早起きされ、カロリーボリュームも朝食が最も多く、野菜大好き、脂ものは好まず、間食はほとんどせず(しかもご自分で調理されると!)。
運動はご自分のサッカーチームをお持ちのほど、業界きってのサッカー好き。アジアカップで日本が優勝したときも「(世界を目指そうというのに)こんなことで喜んでいていいんですか」という辛口のコメントが新聞に載せられていました。
体型も当然メタボには程遠く、さて、どんな結果が出てくるやら。
寺田さんのリスクファクター(危険因子)としてスモーカーであること、またお仕事も考えて、通常の健診メニューの他にオプションとして、肺CTスキャンと脳MRI、前立腺がんの腫瘍マーカーPSAをお勧めし、消化管検査は胃カメラでお受け頂きました。
事前の予想としては(飲み屋にて)、
「ま、この年なんだから、そりゃあ何か出てくるでしょうが・・・。何もないわけはないですよ」
と落ち着き払って盃を傾ける寺田さん。
「う~ん、そう仰りながら、たたいてもホコリひとつ出ない、そんな気もしますね。ぼくとしては肺の方に多少、タバコに関連したのが出て来るといいと思うんですけどねぇ」
と、私。タバコの煙が苦手なわたくしのために、呑んでいて喫煙されるときは必ず席を外され、店が空いているときは店の隅っこで、混んでいるときは店の外で吸ってくださる、心優しいお方なのであります。
で、健診当日。
10時過ぎにご来館頂き、昼までにすべての検査を済まされ、続いてその結果説明をさせて頂きました。
結果としては中性脂肪がやや高い他は、とりたてて重大な病気は認められず、CTスキャンでタバコに原因すると考えられる軽度の肺の変化と加齢に伴う動脈の硬化像。胃カメラでは「萎縮性胃炎」でピロリ菌が原因となっている可能性が示唆され(後日陽性が確認され除菌をお勧め中)、便の潜血反応が陽性となり、こちらは要精査(翌週大腸ファイバースコープによる精密検査で良性のポリープのみと判明)。
結論としては、「禁煙と運動の継続を」。
私「禁煙をお勧めする根拠としては、動脈硬化で細くなった血管が、今までは何事もなく来ましたが、今後は一服のタバコですら、そこに含まれるニコチンなどの作用で収縮を起こし、血液の供給が遮断され、心筋梗塞や脳梗塞になる危険性があるということ。寺田さんを恫喝するつもりはないんですが、これからは、その一本が命取りになるかも・・・。このまま吸い続けても常時酸素吸入(いわゆる在宅酸素療法)が必要になるにはまだまだ相当時間がかかりますし、肺癌の方も毎年のCTスキャンで早期発見可能です」
寺田さん「ということはタバコに関しては、本数を減らすというよりは、このまま吸い続けるか、止めるか、どちらか、ですな?」
私「ハイ、All or Nothing です」
寺田さん、苦笑しながら、
「良~くわかりました。考えてみます」
検査が終わったその夕方、寺田さんからのメール。
「おかげ様で大変明るい気持ちになりました。今日までのストレスは何だったのかと思います。これを機に真面目に健診に取り組みます。スタッフの皆さんの素晴らしい対応にも大変喜んでいたとお伝えください。これから娘の店(お嬢様はイタリアンレストランを営んでいらっしゃり、このたびの受診もそのお店でごちそうになった折りにご相談頂いたのがきっかけでした)で妻と祝杯をあげます。ではまた」
・・・う~ん、健診を受けることがそんなにストレスだったんだ。でも大腸の精密検査が終わるまで手放しで祝杯ではないんだけどなぁ・・・

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