<腹部超音波検査 >
胆のう・肝臓・腎臓・膵臓・脾臓の5臓器に異常がないかを超音波で調べます。お腹のガスや脂肪の影響により、臓器が見えにくい場合があります。特に膵臓や脾臓は解剖学的に超音波では抽出が難しい臓器です。
●胆のう 所見
1、胆のう壁内結石 胆のう壁やその近くから後ろへ彗星(コメット)が尾を引いているように見える所見です。管内結石やポリープで認められます。
2、胆泥・胆砂 砂状の胆石が胆汁と混ざり合って、泥のようになったものです。症状がなければ放置して構いません。
3、総胆管結石 胆のうから十二指腸に至る総胆管内にできた結石のことです。脂肪の多い食事や過労などが引き金となって、痛みを起こすことがあります。
6、胆のう萎縮 胆のうが縮んだ状態です。生理的には食後にも見られます。
7、胆のう腫大 胆のうが腫れた状態です。胆のう炎の所見のひとつで、長期絶食の際などでも見られます。
9、胆のう腺筋腫症(アデノミオマトーシス) 胆のうの粘膜と筋組織が増殖する病変です。30~50才に好発し、全受診者の3~5%の出現頻度といわれ、超音波で比較的特長的な所見が認められます。悪性化はないので無症状ならば経過観察となりますが、胆のう癌との鑑別が一応必要ですので、初回発見の場合は3ヶ月程度の間隔で再検査されることが勧められます。
10、胆のう壁肥厚 胆のうの壁が厚くなっている状態です。胆のう炎や肝炎などの際に起こります。
11、胆のうポリープ 胆のう粘膜にできたポリープ(局所的な隆起)のことです。自覚症状はありません。10mm以上を目安に精密検査を行います。
●肝臓 所見
1、脂肪肝 肝細胞に脂肪が蓄積した状態です。継続的かつ多量の飲酒や肥満、高脂血症などが原因になります。
2、肝のう胞 肝臓内部にできた、独立した袋状組織です。なかには、液体または半固形体が入っています。よほど大きくなったり、数が多くならない限り問題ありません。
3、肝血管腫 血管が綿花のように増殖してできた腫瘍で、良性です。健診では比較的よくみられるもので超音波検査で比較的特長的な所見を認めます。ただし、大きい場合や初めて見つかった場合は、精密検査をする必要があります。
4、肝臓占拠性病変 肝臓の内部に何らかの塊状の所見を認めるものです。腫瘍が疑われる場合は精密検査が必要となります。
5、肝内結石 肝臓内部の胆管にできた結石のことです。
6、肝内石灰化像 肝臓にできたカルシウムの沈着のことをいいます。結核、寄生虫、出血などが原因で形成されますが、原因不明のものも見られます。通常は放置していても心配ありません。
7、総胆管拡張 胆汁の通路である総胆管に、腫瘤や胆石など、何らかによる通過障害が生じて、上流の肝臓と十二指腸をつなぐ部分が拡張している状態です。
8、肝辺縁鈍化、肝表面不整、肝線維化傾向 ともに何らかの慢性肝障害が疑われる所見です。
●腎臓 所見
1、腎萎縮 腎臓が、腎不全などの腎障害のために小さくなってしまう状態をいいます。
2、腎盂の拡大 尿路に生じた通過障害によって、腎臓内部の腎盂が膨張している状態をいいます。原因としては、尿管結石や尿管腫瘍などが考えられます。確認のための精密検査が必要です。
3、腎血管筋脂肪腫 血管や平滑筋、脂肪などからなる腫瘍で通常、単発で良性です。全受診者の約1%にみられ、超音波検査で比較的特長的な所見を認めます。悪性化することはまれですので基本的には経過観察されますが、ある程度以上に大きくなったものは治療の必要となることもあります。また両側性,多発性の場合は遺伝性全身疾患である結節性硬化症に合併した可能性があります。
4、腎内石灰化 腎臓にできた微細なカルシウムの沈着のことです。将来結石になるのかどうかは不明ですが、放置しておいて構いません。
5、馬蹄腎 腎臓の先天的な奇形です。左右の腎臓の一部がつながっており、尿の通過障害や、尿路感染症などの合併症のある場合以外は放置して心配ありません。
6、腎結石 腎臓にできた結石のことです。痛みや腎機能に障害を来たさなければ放置して構いません。
7、腎のう胞 腎臓内にできた袋状の組織で、基本的には心配のないものですが、壁や内部の状態に不審な点があれば、精密検査で確認します。
8、重複腎盂 腎臓・尿管奇形のうちでも最も多い先天的な奇形で、0.5~1%くらいの割合で認められるとされています。片方の腎臓の中に上下2つの腎盂が存在するもので、通常、病的な意味はありませんが、まれに腎盂炎や閉塞による障害を起こすことがあります。
●膵臓 所見
1、膵石灰化 すい臓の内部の微細なカルシウムの沈着したものです。慢性膵炎や膵臓の腫瘍などが同時に認められなければ放置して構いません。
2、膵のう胞 膵臓内にできた、独立した袋状の組織です。袋には液体が含まれています。急性膵炎、慢性膵炎、外傷のほか、腫瘍に伴ったり、先天性に形成されることがあります。基本的には良性で経過を観察すればいい場合が多いですが、膵臓の壁や内部に腫瘍との関連が疑われる場合には、精密検査を行います。
3、膵管拡張 膵臓から十二指腸へ通じている膵管が拡張している状態です。膵管内の結石や腫瘤・腫瘍が原因していることがあり、経過観察や精密検査の対象となることがあります。
4、膵石 膵臓にできた結石のことです。慢性膵炎などがあるとできやすくなります。
5、膵臓腫大 全体的に大きくなっている場合は膵炎などの炎症が、局所的に大きくなっている場合には腫瘍を疑って精密検査をする必要があります。
5、膵一部低エコー、膵一部高エコー 明らかな病変とは断定できないものの正常では通常認められない局所的な所見を示すもので、経過を観察していくことになります。
6、膵臓占拠性病変 膵臓の内部に何らかの塊状の所見を認めるものです。腫瘍が疑われる場合は精密検査が必要となります。
●脾臓 所見
1、脾臓石灰化 脾臓にできたカルシウムの沈着のことをいいます。脾臓が大きくなっていなければ通常は放置して問題ありません。
2、脾臓腫大 肝臓や血液の病気、感染症などで大きくなることがあります。その程度によって精密検査が必要となります。
3、脾嚢胞(のうほう) 脾臓のリンパ管や血管が変化したり、外傷、感染、梗塞などが原因となって脾臓の中にふくろを作るものです。小さなものは問題ありませんが、大きくなると精密検査が必要になります。
4、副脾 正常の脾臓から離れて存在するもうひとつの小さな脾臓組織で、約10%の割合でみられます。通常、病的な意味はありません。
5、脾血管腫 毛細血管が増殖してできた脾臓の良性腫瘍です。超音波検査で比較的特長的な所見を認めます。通常は心配ありませんが大きくなるようですと精密検査が必要となります。
●その他 所見
腹部リンパ節腫大 腹腔内のリンパ節が腫れているもので、リンパ性腫瘍や腹部炎症に伴うもののほか、活動性病変とは結びつかず、経過観察が必要なものもあります。
乳腺 乳腺
のう胞
乳腺症などがある場合に乳腺の中に独立した袋状の組織ができ内部に液体がたまることがあります。これがのう胞です。のう胞は月経周期のホルモンの変化によって乳管が膨らんだり縮んだりするために起こる生理現象の一部です。病的な意味はありません。なお、腫瘍に付随するのう胞というものはありませんが、のう胞内に腫瘍を有する「のう胞内腫瘍(の疑い)」や「のう胞内癌(の疑い)」は全く別物です。のう胞内に充実性の部分があれば必ず要精密検査が必要となります。
乳管
拡張
全体的に乳管が拡張する理由としては月経周期のホルモン変化によるものや妊娠・授乳に伴うものがあるます。このようなものは病的な意味はありませんので心配ありません。ただし、部分的な拡張の場合には乳管内に腫瘍があり乳管の流れをふさいでいる場合があります。腫瘍には乳管内乳頭腫などの良性の病気や乳癌などの悪性の場合がありますので、精密検査が必要です。