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院長の解説 「膵臓がんの早期発見」

2019年の統計で43,865人の方が膵臓がんに罹患し、2020年統計で37,677人の方が膵臓がんで亡くなっています1)。
罹患者数は胃がん、肺がんなどに比べ少ないものの死亡率が高く、5年相対生存率(がんと診断された5年後に生存している割合)は胃がんや大腸がんに比べかなり低く、8.5%と報告されています1)。がん死亡数の順位(2021年)では男性4位、女性3位となっています2)。
初期には症状が出にくく、腹痛、腹部膨満感、背中の痛みなどの症状が出てから診断される場合、多くは進行がんとなっています。また、膵臓の特性上、がんが小さいうちから周囲のリンパ節や肝臓に転移しやすいため、症状がなくとも診断時にはすでにステージ(がんの病期)が一番進んだIV期となっていることも少なくありません。しかしながら、早期(ステージI )に発見できた場合には、5年生存率はおよそ50%との報告があり1)、膵臓がんについては早期発見が特に大切です。
健康診断、人間ドックでは腹部超音波検査で膵臓を観察しますが、超音波検査では膵臓が見えづらいこともあり、早期発見の手段として十分とは言えません。また、膵臓がんの腫瘍マーカーCA19-9なども診断の助けにはなるものの、早期発見に有効な検査ではありません。
早期発見につながる検査としては、腹部MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査、腹部CT(Computed Tomography)検査があり、特に腹部MRIは磁気を使い放射線被ばくがないので定期的受けるにはお勧めの検査です。
当センターではオプション検査として腹部MRI検査を実施しています。血縁の家族に膵臓がんにかかった方がいる、糖尿病や慢性膵炎の既往、喫煙、大量飲酒、肥満などは膵臓がんの発生を高めるリスクであることがわかっています。
特にこれらのリスク要因をお持ちの方は、年一度の腹部MRI検査を受けることが膵臓がんの早期発見につながります。また40歳を過ぎたらリスク要因がなくとも検査をうけることをぜひおすすめします。

参照データ
1)がん種別統計情報:[国立がん研究センター がん統計] (ganjoho.jp)
2)厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況 図5主な死因」2023, p11(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/gaikyouR4.pdf)